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かつてこんな献立が

②下呂温泉「湯の嶋館」で「陣立」

 昭和6年11月15日(土)午前7時大阪駅を出発した一行は、先ず愛知県の犬山城跡を訪れて散策し、公園内の小料理屋?で昼食をとった後、下呂温泉の「湯の嶋館」へ向かいました。当時の列車でどれほどの時間を要したかは不明ですが、早夕刻には到着したのではないかと。勿論、当番幹事の4名は犬山へは寄らずに直行して調理をしたのでしょう。しかし厨房を借りるとなれば幹事の誰かが「湯の嶋館」とよほど昵懇でなければ無理ではないかとも思われますが。それとも当時はもっとおおらかだったのでしょうか。

 さて、残されている献立は、柾(まさ)判(1尺3寸×1尺7寸5分(39.4cm×53.0cm))の大奉書紙を縦二つ折りにして2枚に書いたもので、表に「大阪調理会 陣立」と印し、銀で鯱鉾を描いた厚紙で「たとう包み」にしてあります。(写真参照)
 「陣立」と書かれているように、献立のそれぞれが各地の城に見立てて作られ、城下の情景や名産物、雰囲気を楽しむことができます。
しかし、原文は読みづらいので、できるだけ現代の字に翻訳してみましたが、書かれている字は達筆なのでしょうが、難解で間違った字をあてたままや、意味が分からないままになっているところも多くあるので、原文には赤丸を、訳文には赤の傍線をつけましたが、諸賢のご教導を乞い願います。
 当番幹事の牧野楳太郎(静観楼)・松尾金兵衛(魚松)・北川浅右衛門(福清)・寺島彌兵衛(丹彌)の各氏について、店名を昭和4年の名簿から、店舗の絵は大正13年の店舗絵図から転載しました。残念ですが各店とも現存していません。

※陣立書とは、合戦における部隊配置・編制(陣法・陣立)を指示するために概念的に示した作戦指令文書。(ウィキペディアより)

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①飛行船ツエッペリンが来た

昭和4年8月19日、当時世界最大の飛行船ドイツの「ツェッペリン伯号」が世界一周の途中、日本に立ち寄り、霞ケ浦海軍飛行場に着陸。
「君はツェッペリンを見たか?」が当時の関東地方の流行語になっていたようですが、5日後ロスアンゼルスへ太平洋無着陸飛行に飛び立ちました。
時の大阪調理会の当番幹事はこれに目をつけ、さっそく浜寺に「ツェ号」を着陸させてしまいました。
料理屋や料理人は江戸時代から世の中の出来事を題材に料理を創ったり、命名したりしてお客さんと一緒に楽しむ気風がありました。これも大阪の料理屋の洒落です。
第壱号から第四号の号外は、その時の模様を後日になって号外にして会員に配られたものと思われます。第参号に掲載の献立をご紹介します。しゃれっ気をお楽しみください。
第四号に担当の幹事の名前が載っていますが、早川兼三郎さんは、「菱富」の先々代でしょうか?

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大阪調理会は

「大阪調理会」は、
明治31年(1898)、大阪市内の料理屋の主人達を中心に、調理技術の研鑽、経営の研修などを目的に創立した団体で、現在の大阪府料理業生活衛生同業組合のルーツと言われています。 年二回、当番幹事が趣向を凝らした献立を主にして例会を続けてきたようです。
昭和12年、「大東亜戦争」へと拡がっていく「支那事変(日中戦争)」が勃発しています。翌13年に開催された資料は残っていますが、以降の資料は見あたらず、戦争がはげしくなって中断したままになったのでしょうか。


昭和4年に改正された会則に「本会は大阪料理業住吉燈籠講と提携し、毎年寶の市神事には神納金を捧げ、且会員1名につき金壹圓の割にて住吉講に提供し寶の市参加並びに拝観費に充つるものとす」と書かれています。
ちなみに住吉大社の「寶の市神事」とは、
御田で刈り取りのお祭りを行い、引き続き本宮にて刈り取った初穂と五穀を神前にお供えする神事です。「寶之市」とは、文字通り、神のお恵みによって得られた「お寶」を指します。つまり稲作りに励んだ結果できたお米をはじめとするさまざまな生産物を神にお供えし、その残りを庶民で分け合うというお祭りです。着飾った市女 (いちめ) 5人が五穀を入れた升を神前にお供えします。文字通り料理屋にとっても大切な神事であったといえましょう。


年2回の例会が開かれましたが、その中で僅かですが資料が残されています。追ってご紹介してまいります。

発起人

  • 岸 芳兵衛(岸松館)
  • 小林 文助(相生楼)
  • 大江 仙治郎(魚利楼)
  • 鵜野 卯兵衛(堺卯楼)
  • 辻川 治助(明月楼)
  • 福井 平右衛門(みどり)
  • 奥村 源助(玉水)
  • 花里 常蔵(?)
  • 青木 三津蔵(?)
  • 岸 平三郎(岸松館)
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