【おことわり】
このページは、これから和食に挑戦してみようかと思っている方に見ていただければ・・・と思って作ったページです。
専門的な知識は別途でお求めください。
ぜひ和食をお楽しみください。
平成25年12月、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
日本は南北に長く、四季が明確な日本には多様で豊かな自然があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うように育まれてきました。
このような、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいた「食」に関する「習わし」を、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題して、平成25年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
「和食」の4つの特徴
(1)多様で新鮮な食材とその持ち味を活かしています
日本は海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、地域に根差した多様な食材が用いられています。
(2)健康的な食生活を支える栄養バランスがあります
一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。
(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現
食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。
(4)正月などの年中行事との密接な関わりがあります
日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。
上記は農林水産省ホームページから抜粋ですが、ここでは肩ひじ張らずに、「和食・日本料理」を楽しんでいただきたいと思っています。
日本は、海、山、川、里と、春夏秋冬、豊かな自然に育まれ、多様で新鮮な食材に恵まれています。魚介類や海藻といった海産物、鳥獣や果実などの山の幸、川や湖の魚、里では米をはじめとする穀類や野菜など枚挙にいとまはありません。和食(日本料理)の店はこれらの豊富な食材を利用して、お客様に楽しんでいただこうと努力しています。
山幸彦、海幸彦ゆかりの宮島神社がある宮崎県青島
和食は自然の美しさや四季の移ろいを表現していることも特徴の一つです。
季節の花や葉などを料理にあしらったり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しんでいただきます。
旬とは、それぞれの野菜が大きく育ち、最も収穫に適した時期。魚なら成長したり、水温の変化で身が締まったりする時期。つまり、おいしくて栄養がいちばん豊富な時期で、生命力にあふれる素材そのものの味を楽しむ好機と言えます。
また、初鰹のような季節を先取りする「走り」、落ち鮎(子持鮎)のような翌年まで食べられなくなる直前の「名残(なごり)」など、同じ食材でも「走り」「旬」「名残」と三度の季節感が楽しめる工夫も取り入れられています。
初鰹
和食は季節の移ろいと共に正月などの年中行事と密接に関わって育まれてきました。
年中行事や冠婚葬祭その時々の献立には、それぞれの旬の食材を取り入れたものが多く、季節の風物詩の一つにもなっています。
正月のおせち料理に始まって、七草粥、節分には鬼追い行事にちなむイワシであり、3月はひな祭りにちなむ菱餅に桃の花、5月になると端午の節句にちなんだ粽(ちまき)や柏餅と菖蒲の花、土用の丑の日は鰻。お月見には団子にススキが飾られたり、料理人の腕の見せ所でもあります。
おせち
答えは簡単!「日本独特の料理」のことなのですが・・・
では、何をもって日本独特というか?
そんなこと分かる訳がありません。料理(調理)するということは「切る」「焼く」「煮る」又はそこから派生した方法で世界中共通ですよね。
しかし、「日本独特の料理」ということに無理に理屈をつけるなら「江戸時代以前から日本にある料理(調理法)の流れを引くものを「日本料理と言う」と言うのが無難かもわかりません。
なぜなら、明治時代に文明開化で入ってきた「西洋文化」と共に「料理(調理法)」も入ってきました。そこで、入ってきた西洋の料理に対して元からあった料理に「日本料理」という名詞?を創って当てはめたのではないでしょうか? ただ「和食」という言葉は後から世の中に出てきたようですが。どっちにしても日本人がそれまで普通に食べていた料理をわざわざ「日本料理を食べる」なんて言ってた訳ありませんものね。
「加盟名店ご紹介」のページを見ていただくと、「料亭〇〇」「割烹〇〇」「日本料理○○」などという店名が出てきます。どう違うのでしょう?
厳密には分かりませんが、それぞれのオーナーの「料理」と「おもてなし」に対する気持ち・心意気が現れていると思われます。ですからどこからどこまでと線が引かれているわけではありません。
ところで、割烹の「割(かつ)」は包丁で切ること、「烹(ほう)」は火を使って煮たり焼いたりすることから「割烹」という言葉が出来ています。とすると「割烹」とは「調理する」ということになって“料理を作ってお客様に提供する店は全部「割烹」やないか”となってしまいます。しかし、一説によると江戸時代は主に、会席料理、懐石料理、精進料理といった料理の呼称として使われ、江戸料理に対して、上方の料理を「割烹」と呼んだともいわれています。
一般的には、女将さんや仲居さん達の接待が伴っている店、時には芸妓、コンパニオンが入って接待をする日本料理店を「料亭」と呼んでいます。
ここではお客様に最高の雰囲気と最高の気分で、美味しいお料理を食べ、楽しいひとときを過ごして頂くための気遣いをしていますが、これが「おもてなし」。そして「もてなし空間」の「しつらえ(設え)或いは、しつらい(設い)」が存在します。庭や玄関に打ち水がしてあり、座敷には、床の間に掛け軸、生花等の飾り、几張(きちょう)、屏風がさりげなく置かれています。料理を盛りたてる器としては、陶磁器・漆器・ガラス器・銀器・鉄器・竹など様々な素材を用いたものが、それぞれの季節や料理にあわせて使われています。
そこに、芸妓の磨き抜かれた踊りや唄を楽しみながらプロのもてなしを受けられるのが料亭といえましょうか。芸妓も今では減少していますが、まだまだこうした旧き良きもてなしの伝統は残っています。プロのもてなしも体験してみて下さい。
料理は見た目も質も味も「料亭」と変わりません。「割烹」も「料亭」も本格的な日本料理を提供するというところは共通しているからです。
明治時代後期頃から、お客の好みに応じて板前が目の前で即座に調理した出来立ての高級料理を、気軽な椅子席で食べられるスタイルの店が、大阪で大流行となり、全国に広がっていったといわれ、これが「割烹(店)」と呼ばれるようになりました。
料亭での宴席料理と違い、板前に直接自分の好み(味付けなど)を伝えたり、逆に板前の方からはお客に魚や野菜の旬や特に美味しい部分などをさりげなく教えたり、調理過程を見ることができたり、作る側と食べる側とがコミュニケーションをとりながら、というのが大きな特徴です。
とは言え、コース料理は経験があるが「割烹は初めて」のお客様は“何を”“どのように調理してほしい”かを板前に伝えるのはちょっと大変です。でも、一品、一品のメニューが設けられていますから、分からないところは質問しながら注文してください。もちろんコース料理も設定されています。気軽にのれんをくぐって下さい。
割烹や料亭はどうも敷居が高そうで・・・。そんなに堅苦しいものでもありません。
料亭・料理店の利用の仕方を紹介しましょう。
手前味噌ですがこの組合ホームページの「名店ご紹介」のページには、店名に続いてその店の得意料理の分野が載せられています。とりあえず気に入った店が見つかったらクリックするとその店のホームページに飛びます。
先ずは電話をかけてください。
「はじめて電話するが・・・」
「店のホームページを見ているが、その中の○○コースを利用すると、料理代に室料、サービス料、税金、飲物などを含むと、予算は一人どのくらいになるか?」
「どんな部屋が利用できるか?」
「芸妓を呼ぶことができるか?」
「その時の料金は?」
「事前の予約は必要か?」
「アクシデントでキャンセルする場合は?」
お客様も初めて行く店はどんなものか不安があるのと同じように、店にとってもどんなお客様か不安があります。店からのおたずねについては出来るだけ応えてあげて下さい。双方が信用できるように・・・。
そして、店の対応によって利用をお決めください。
インターネットは店選びには便利で、店をランク付けしたり、点数をつけたり、褒めたり、けなしたり、そんなサイトがたくさんあります。便利ですが、中には信用できないものもたくさんあります。「百聞は一見にしかず」多種多様な店をたくさんご利用いただいて、ご自身の中でランクをつけていただければ、私たちはありがたいと思っています。
日本は山の幸、海の幸に恵まれ、その上に四季があって多様で新鮮な食材に恵まれています。では、料亭や割烹など和食の店ではこれらの食材がどのように料理になっていくのでしょう。
和食とは、素材そのものの風味、よさを引き立たせる素朴な調理法によって、「おいしいものを探しその持ち味を味わうこと」といえるかもわかりません。
割烹の「割」は包丁で切ること、「烹」は火を使って煮たり焼いたりすることから「割烹」という言葉が出来ていると先に書きました。料理に彩りを出し、素材の持ち味を引き出すためには味付け前の下処理に手間をかけています。それが食材を切ることから始まるわけです。
「割」から「烹」へ。ここで切られた食材は、刺身や酢の物に使われる「生もの」と、焼く、煮る、揚げる、蒸すなど多彩な方法へと移っていきます。
煮物は出汁(削り節や昆布などを煮出して作られる)を基本に、味噌や砂糖や醤油を用いて素材の持ち味を損ねない味付けが行われます。
刺身、焼き物などには醤(したじ)と呼ばれる醤油、ポン酢などが添えられ、また、香味野菜(葱、わさび、生姜など)を刻んだり、すりおろしたりした物が「薬味」として使用されています。醤はつけ汁として、薬味は味をつけると同時に毒消し・殺菌の意味も持っています。先人の経験と知恵のたまものと言えましょう。
「論語」の中に「食」のことが書かれている。ということを聞きかじって調べてみました。 孔子は、米の精米具合や膾(なます)の厚み具合に始まって、変色した物は食べない、異臭のする物は食べない、煮込みすぎて精気を失った物は食べない、季節はずれ(旬でない)の物は食べない、煮かげんの良くないものも食べない、など多くのことを語られています。
そんな中で原文に「割不正不食」「不得其醬不食」「不撤薑食」という文字を見つけました。
「割不正不食」-切り方が正しくないものも食べない-
「不得其醬不食」-適当な醤(したじ)がなければ食べない-
「不撤薑食、不多食」-口直しの薑(はじかみ:ショウガの類)は必ず食べるが、食べ過ぎてはならない-
中国では、紀元前400~500年頃、すでに料理の基本が孔子の言葉に表れ、それが書き残されていることに驚かされます。
こうして調理された料理が提供されます。そこでお客様に食べていただく順序を考えて作られるのが、「献立(こんだて)」と言われるコース料理の内容で、お店によっては「本日のお献立」として紙に書かれたものをお膳にお付けしています。
献立(献立表)には概ね、 ①「料理の種類・名称」、例えば“造り・向付”とか“焚合せ”とか、そして ②「その料理の内容」、例えば、造りの欄には“鯛”“鮪”などが書かれ、焚合せの欄には“竹の子旨煮、餅麩”などが簡単に書かれています。
①「料理の種類・名称」ですが
- 「先付・付き出し」(最初に出てきます。旬の素材を使った簡単な一品)
- 「お造り・向(むこう)・向付」
- 「お椀・吸物・汁」
- 「八寸(はっすん)」(山海の味覚を小粋に盛り合わせた板前のセンスの見せ所)
- 「焼物」(文字通り魚や野菜を焼いたもの、様々な焼き方があります。揚げ物もあります)
- 「煮物・蒸物・焚合(たきあわせ)」(違った素材をそれぞれの方法で煮た物を盛り合せる)
- 「酢物」
- 「ごはん・飯物」
- 「香物・香の物」
- 「冷物・果物・水菓子・デザート」
などとなります。これらは比較的に一般的な名称(調理の仕方など)ですが、店の考えで、名称や書き方、種類の数、順が変わります。
ある店の7月の献立です
②「料理の内容」は、おおむね食材と調理の仕方を書いています。魚の種類、鳥や肉の種類、野菜の種類などと、切り方や煮方や焼き方などが書かれています。これについても店の考えで、その日に入荷する食材の関係で詳しく書いていない場合もあります。
「献立」には、料理の名称、読み方、食材の名前などで、日本料理独特の言いまわしなどを使っていますので、読んでも難しいものもあります。また、「結婚披露宴」のようなおめでたい席、「法要」のようなお席、それぞれに合せた書き方もします。そんなときはご遠慮なく接待の人に「これって何?」と聞いて下さい。その人が分からなかったら料理人に聞きに行きますから・・・。その人の勉強にもなりますし・・・
このホームページの「所有の資料から」「かつてこんな献立が」のページを見ていただくと、
洒落っ気たっぷりの昭和4年の献立を見て頂くことができます。
「一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われ、“旨味”を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現して、日本人の長寿、肥満防止に役立っています。」和食の無形文化遺産の登録に際し、日本の食生活をこのように表現しています。
「一汁三菜」とは基本的に、ご飯、汁物、おかず3品(主菜1品と副菜2品)と漬物という組み合わせを言います。
「ご飯」でエネルギー源となる炭水化物を、味噌汁やすまし汁などの「汁物」で水分や塩分を、「主菜」は魚や肉、卵、豆腐などのたんぱく質を、「副菜」は野菜や芋、豆、きのこ、海草などでビタミンやミネラル、食物繊維を充分にとって栄養をバランスよくとることができます。さらに、漬物によって肉や魚を食べた口の中をさっぱりさせることができます。
元々は「一汁一菜」として鎌倉時代の禅寺の質素倹約を重視した食事の形式を指す言葉で、おかずも野菜を用いた極めて質素なものでした。ただ、特別な日や来客時には「一汁三菜」となり、この食事形式が一般の人々にも広まり、やがて一汁一菜・一汁三菜が日本の伝統的な日常の食事形態として定着することになりました。
静岡文化芸術大学学長の熊倉功夫先生によると、『ご飯と味噌汁、そして、「お菜」(おかず)と漬物。この四つが和食の基本的な献立です。それがあれば、和食と言っていいだろうと思います。
昔はみんな銘々膳(一人ずつのお膳)で、そこに乗るのが一汁三菜でした。それは家庭で食べる料理です。ところがお客様が来た時には、それでは失礼だということで料理を増やしますが、お膳に全部載り切らないので二つめのお膳を出すんですね。二の膳には汁とお菜が二つ、本膳の一汁三菜と二の膳の「一汁二菜」であわせて「二汁五菜」。この二汁五菜というのがあって、一汁三菜の意味が分かりますので、一汁三菜だけが独り歩きしてお菜が三つでなければならぬと思われては困ります。
また、「おもてなしでは一の膳、二の膳と続くが、一般的な食事は一の膳だけ。一つの膳に載せるには、ご飯と漬物、お汁一つとお菜(おかず)が限界。しかし、現代は銘々膳ではないので、一汁三菜でも四菜でも七菜でもいい。』とも言われています。
江戸時代、経済、物流の拠点だった大阪は、全国の藩が蔵屋敷などを設け、生活物資の多くが一旦生産地から大阪に集められ、大阪商人によってさばかれ、再び全国の消費地に送られたところから「諸国之台所」と評されていました。
江戸時代初期に蝦夷(北海道)から日本海を南下し、下関を経て瀬戸内海を通り、大阪までの西廻り航路が開発されたことにより、それまで北陸から琵琶湖、京都を経て運ばれていた昆布が、北前船によって直接大阪へ運ばれるようになり、大阪を中心に普及して行きました。より蝦夷に近い江戸より先に関西で普及したのは、当時の航海術では太平洋を南下することが困難であったと考えられます。
北海道や東北でしか採れない昆布が、大量に大阪に運び込まれます。そして、大阪の質の良い水とあいまって「昆布」と「鰹節」から生まれる特有の「ダシの文化」が生まれ、様々な食材の旨みをすべて生かしながら、目にも美しい料理「うす味の文化」を作り上げたのです。
関西の水はミネラル分の少ない「軟水」です。これは旨味成分の溶け出しやすさに影響していて、昆布の持つグルタミン酸が溶け出しやすかったのです。そこに鰹節に含まれる旨味の成分イノシン酸をあわせると旨味の相乗効果が生まれました。当時の人々が「グルタミン酸」や「イノシン酸」の成分や、水質が「軟水」と呼ばれることを理解していたとは思われませんが、経験から生み出された先人の知恵と言えましょう。昆布のグルタミン酸と鰹節のイノシン酸でたっぷりと旨味の出た「ダシ」はそれだけでおいしかったのです。
日本各地から美味しい食材が大阪に集まってきましたが、それらを判断するのは、大阪人の厳しい味覚でした。そこには料理人の知恵と技、そして堺が輩出した優れた道具・包丁が加わることによって、大阪は優れた食の世界を構築してきました。